朝井まかて氏の『類』を読了しました。
森鴎外の子息、類氏の生涯の物語である。
あらすじは上記、ブクロブで紹介したとおりである。
本作、わたくしのポイントは二点である。
ひとつは、すごいぞ、最初から最後まで主人公の類氏に対してまったく好きになれなかったということ。
こんなやつがそばにいたら、蹴とばしてさっさとご縁を切りたいほどである。
イライラしちゃう。
それにもかかわらず、読み進んじゃう。それが朝井氏のおそろしさである。こういうのを筆力というのだなあ、と感服。ゆえに、主人公たちキャラクターに感情移入する系ではなく、舞台背景である明治から平成の時代描写が読みたくてページをたぐる作品なのだ。
たとえるなら深緑野分氏の『ベルリンは燃えているか』系とでもいうか。
ストーリーよりも背景描写に圧倒される、そういう作品である。
二点目はその物理的ボリューム。文庫のフォントはなかなか大きくて、文庫の厚みも結構あった。ということは重量もあるということ。京極氏ほどではないけれど、通勤時に拝読するのに持ち歩くにはあまり適しておらぬ。
しかも前述のとおり「お前がちゃんとはたらけばいいだろうがよお」と胸で類に悪態をついていると、イライラしちゃってページをめくるのが遅くなって読了するのも遅くなりという悪循環。
読了して、この重量から解放された。すばらしい。さよなら、肩こり。うえるかむ、ハレバレ人生なのだ。
ストーリーよりその背景をたっぷり楽しむのが何よりも好きだ、という方にオススメである。
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